日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

このごろ観たもの。

先日観た映画。

ルーマニアのジプシーブラス・グループ、

“ファンファーレ・チョカリーア”のドキュメンタリー、

『炎のジプシーブラス〜地図にない村から』



先日ライヴに行ったチャボロ・シュミット一家のマヌーシュ・スウィングをはじめとして、

最近、すっかりワールド・ミュージックというか、ジプシー系の音楽が好きになっていて。

一言で“ジプシー”といっても(この“ジプシー”もヨーロッパでの蔑称なので、結構使い方が難しい単語らしいですが、とりあえずここでは分りやすくこの言葉を使ってみます)

地方も違えば、当然文化も違ってくるわけですが、

共通しているのは、差別されたり、とても貧しい暮らしを強いられることが多い……ということ。

私もしっかりと、彼らの歴史を勉強しているわけでもないので、あれですが、

そういう厳しい暮らしの中でも、彼らの中には音楽やダンスがあり、

自身への誇りと伝統が、脈々と受け継がれていて。

とにかく、地域によってその表現する音楽のスタイルは違えど、同じように何か伝わってくるものがあります。

それは、ちょっと今の日本で暮らす私にとってはノスタルジー的なものであったり、

島国ではない、大きな大陸で地に足をつけて息づいてきた力強さであったり、

ちょっと血が滾るというか、自然に心を躍らせるような躍動感であったり……。

多分、私が彼らの音楽に惹かれるのは、そういうことなのかな?と漠然と思ったりするわけですが。



でもって、この映画は、ルーマニアと旧ソ連との国境近くにある寒村から、

ひとつのブラス・グループが見出され、果てはワールド・ツアーまで行なうようになる姿を

ちょっとファンタジー的フィクション描写を上手く挟み込みながら映し出したドキュメンタリー。

譜面も読めないし、音楽的な勉強は何一つしていないおじさんたちが、

鼻歌でメロディを口ずさみながら1曲にまとめていってしまうその様は、なかなか興味深く。

世界的に有名になっても、おじさんたちは貧しい村に帰って、また地に足ついた生活をするのです。



ただ、音楽ドキュメンタリー映画なのに、題材がマイナーなせいか劇場がとても小さくて、

ちょっと音響設備が物足りなかったかな……というのは正直なところ。

上映されるだけでも万々歳なので、とても贅沢な話ですけどもね。









でもって、昨日は世田谷パブリックシアターにて

サイモン・マクバーニ演出の 『エレファント・バニッシュ』を観劇。

学生劇団時代の先輩にたまたま声をかけていただいたのですが、

(じゃなければ、たぶん全然知らずに終わってしまっていたでしょう……)

とてもとても興味深い作品でした。

実際、お芝居を観ること自体、ものすごーく久しぶりで、それだけで嬉しかったのですが。

題目が村上春樹の短編「象の消滅」「パン屋再襲撃」「眠り」を元に構成されていて、

春樹好きな私としては、それだけでもかなり掴まれ。

でもって、舞台装置や視覚的な演出はかなり新しいというか(まあ、最近あんまり観てないんであれですが)、先鋭的で。

でも、テーマややっていることは結構オーソドックスというか……

その辺のせめぎあいというかバランスの微妙な匙加減が、

とても興味深かったです。

春樹作品の解釈の仕方というか、テーマの抜き出しというか、そういう提示の仕方も

私にとっては「こういう解釈もアリなのか!」と新鮮でしたし。

ということで、とても有意義なひと時でありました。



その後、その先輩と、「日本の演劇は、なんで広がっていかないのか」という話で

ちょこっと盛り上がってみたり、

まあ、久しぶりに演劇話ができて、楽しゅう夜でございました。





ああ、充実。

よしよし。