日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

コードネームはペンギン

ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)

ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)



この土日は、この本を読んでいました。

以前、どこかでタイトルだけ見かけて

無類のペンギン好きとしては(笑)「これは読まなきゃ!」と思っていたのでした。

で、たまたま出かけた書店で見かけ、購入。

“新ロシア文学”などと帯や解説にはありましたが。

ウクライナの新鋭作家さんらしいです。

個人的に、好きな世界というか、しっくりくるトーンの作風で、

面白く読了いたしました。





孤独を抱えている小説家の男と、憂鬱症のペンギンとの静かな生活。

ちょっとばかり、オイシイ臭いのする仕事の話。

自体は明るい方向へ転がるかと思いきや……。

主人公とペンギンの周りに、どんどんと人間が増えていく。

その一方で、消えていく人間も。

懐は、あたたかくなっていくのに。

孤独感は、埋まらない。







読んでいて、なんとなく以前から馴染んでいる空気を感じたのは、

訳者あとがきでの「この作者は村上春樹の『羊をめぐる冒険』が好きだそう」という一文から。

なるほど!

確かにテイストが村上春樹に似ているやも。

だけど流石(?)ロシアの作家だけあって、

やはり、重い。

その重さの種類が、どこかずっしりと立ち込めた曇天のような。

拭っても拭えない、言い得ない重たさ。

なんか、主人公の結構な身勝手さとか場当たり的な感じとか、

「ああ、確かにこれもまた人間の姿よね……」という身も蓋もない感じ。







だけどだけど、

とにかくペンギンの“ミーシャ”の記述が、ペンギン好きには堪らなく(笑)。

その頭を膝にのっけてきたりするのですよ?

あああ、私もペンギンと暮したいーーー!

……と、阿呆なことを思ったりしちゃったりしてみたり。





一粒で色々な味が楽しめる、そんな一冊でございました。