日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

最期の数日


ガス・ヴァン・サント監督『ラストデイズ』を観る。


カート・コバーンの死に着想を得たという作品。
ひとりのミュージシャンが、死を選ぶ直前の数日間。
「狂ってしまった(ようにみえる)」彼のその姿を、
ストーリーもなにもなく、ただひたすら淡々と追っているだけ。
その描写も、結構わかりやすいというか、ありきたりな感じ。
だから多分、主題はそこにはないんだろうな、と思う。
“カートの最期”というキーワードが一人歩きしてるみたいで
ネット上でも賛否両論みたいですけど。
確かに、カートの死の真相を求めて観にいったり、
カートにちょっと思い入れがある人にとっては、納得いかないかもね。
(あの“狂い方”の解り易さとか、逆にカチンとくるかも)



死を選ばざるを得なかった人間の“目には映らない闇”。
その、深さ。
それが、淡々とした映像の中に透けて見えてくる
(…ような気がする。あくまで気がするだけ)。
“見えるもの”は、たいして意味をなさないのかもしれない。
実際“音楽”は見えないわけだし。



……とりあえず、私のような超絶凡人には、
極めてしまった(極まってしまった)種類の人の苦悩は、
あまりに遠くて、だからこそ眩しくて、
そして、あまりに他人事だ。
作中に出てくる、主人公の友人たちのように。



個人的には、ガス・ヴァン・サントとも関係のあった
エリオット・スミスを思い出してました。
私は彼が逝ってしまってから、彼の音楽をちゃんと聴けてない。
悲しすぎて。
だから、最後のアルバムも、買ったままずっと再生してない。
でも、
ちゃんと聴こう、と思えました。
それは、この作品の主人公“ブレイク”が、
最後の最後に、やはり歌を歌ったから。
あのアルバムにも、エリオットのあんな気持ちが入ってるかもしれない…
そう思ったので。



From a Basement on the Hill

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