日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

王様たちと女王様

アルノー・デプレシャン監督の『キングス&クイーン』をまた観てきた。
公式サイト
→前回感想:id:akimi:20060624



前回は、ノラ(女性側主人公)に感情移入しすぎてしまい。
3章あたりはもう、どうにもこうにも落ちてしまったので、
今回はできるだけニュートラルに!
努めて観た…つもり。です。
そんなこんなで、前回はロクに頭に入らなかった
エピローグが沁み過ぎました...。
やっぱりこの映画、すごく好きです。

※以下、少々ネタばれ
なんていうか、改めてノラって凄い女!(笑
でも、“女王たれ”と育てたくせに、最期の最期に
あんな呟きを残しちゃう父はやっぱりイケズ…。
“キング”だと思われていたはずの人が、実は従者であった。
その、現実。
でも、結局、親が子に注ぐ愛情というものは、
そういう種類のもののような気もします。
おまけに、「なんて素敵なの! イスマエル!」と前回は思って観てましたが、
やっぱりヤツもたいがいな人間であると、しみじみ。
だけど「男と女は別の生き物だから、同じ次元で話はできない」という
彼の信条にも、同意せざるを得ない部分も...
そして。
“キング”だった彼も、ついにひとりの女性の前で跪く。
まだまだ若いアリエルだけど、
彼女もまた、イスマエルと出会ったことでひとつ大人になり。
どんな“女王”になっていくのかな...

そして、今回はちゃんと観た!エピローグ。
イスマエル(男性側主人公)が、元・義理の息子エリアスに
「共にあった過去、それは消えない」と諭すわけですが。
その事実が“あった”ことは確かだけれど、
結局それは“過ぎてしまったこと”でもあるわけで。
思い出として心に残る...とはいえるかもだけど、
その”思い出”こそ、頼りなく消えて行くもの、な気がして仕方ない。
…と思うのは、私が“女”だからかもしれません。
良く、恋愛に関して「女は上書き保存」とか言われたりするけど、
私はそうは思わなくて。
単純に、女は”残すべきもの”“そうじゃないもの”の取捨選別が
シビアかつ“都合が良い”のだと。
要するに、“思い出を自分に都合良く美化して残す”ことに長けてる(苦笑。
この映画でも、
ノラはかなり都合よく、死んだ旦那を夢に登場させてたし
父親に関しても、“焼去”(わざとこの漢字をあててます)ことによって
きっと“厳格ながら自分を愛してくれた父”として
美しく思い出に刻むんだろうし。
だから“過去=思い出”に何かしらの価値を覚えられるのは
男性ならでは、なんじゃないかなぁ...と。
(でも私は一方で、男性の”記憶力”の危うさも感じるし、
 それには期待しないことにしてるのだけど)



だから、誰も私の”思い出”にはならないで。
「願わくば、私の方が先に朽ち果てむことを」
そうしたら、貴方を都合よい思い出に留めることなく。
そして私は、貴方の思い出になれる。