日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

その世界に向わせるもの

ヘンリー・ダーガー 少女たちの戦いの物語ー夢の楽園展@原美術館


ヘンリー・ダーガーに関して、私の知識と言えば。
お恥ずかしながら「少女に男性器をつけて描いていた孤独な老人」程度しかなく。
だからこそ、生のその世界に触れるのを楽しみに足を運んだのです。


なんかもう、ぶっとばされました。


極彩色の闇。
壮大な世界観を持った、莫大な頁数の物語。
大きな、大きな挿画。
躍動感溢れる構図、まばゆい色使い。
なのに、どうしようもない閉塞感。
おまけに、これは彼の"ライト・サイド”の作品ばかりらしい...


もっと、見たい!


あまりにあんまりにもぶっとばされたので、
そのまま、ヘンリー・ダーガー特集の『美術手帖』と
ジョン・マクレガー著『ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で』を購入し。
その世界に触れれば触れるほど、どんと、肩にのしかかる恐怖。



私はどうにもこうにも、対象に感情移入しすぎる。
だけど、私がヘンリー・ダーガーに移入しても仕方が無いはずだ。
そのワケを、コトバにはしづらいけれど。


どうしようもない孤独。
彼には、“非現実”しかなかった、のか?
現実では、雑用をこなして薄給で暮らす。
そうしないと、生きられないから。
そうまでして、生きたのは何故?
彼が生み出す”非現実”のために?
“非現実”創造のために生きたのか、
現実に留まりたいから“非現実”を生まざるを得なかったのか。
...どちらにしろ。
彼が向き合えるのは、“その世界”しかなかった。
ぶっちゃけ、“幼女にちんちんつけたのなんで?”とか、どーでもいい。
少なくとも、私にとっては。



彼の作品は、私の中の“孤独に対する恐怖”を増幅させる。
私も、“その世界”...が、欲しい。
でも。
私は、彼よりは格段に幸福なのだ。疑いようもなく。
...相変わらず、私はアートを自分勝手に、自分本位にしか消化できないなぁ。



怖い。
だけど、それを“怖い”なんて言えるのは、なんて幸せ。


ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

美術手帖 2007年 05月号 [雑誌]

美術手帖 2007年 05月号 [雑誌]