日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

いつか来るその日が幸福であるように


ピーター・オトゥール主演、『ヴィーナス』を観ました。
なんていうか、帰りの電車で思い出し泣きした。思わず。
じんわりとした、暖かさ。


あとは死を待つだけ、なんて気分で暮らすおじいちゃんが、
友達の親戚の小娘に、イカれてしまうというお話。
元は人気俳優だった洒落モノのおじいちゃん。
なのに、相手の小娘は、正直、びっくりするほど魅力的じゃなくて。
でも、若くてエネルギッシュ。それだけは、確かなチカラ。
溢れ出すような輝き。
そんな"自分がとうに諦めたもの”を目の当たりにして、
彼はもう一度、それに手を伸ばしたくなる。
そしてその日から、"死”を待つだけの日々が鮮やかに色づいていく。
そんな彼の想いは、当然ながら、
相手のオンナノコにも、周囲の友達にもちゃんとは理解してもらえないのだけれど。
利用されたり、非難されたり。
だけど、手を伸ばさずにはいられないのだ。
まもなく尽きるであろう自分の命の火、その限りが見えているからこそ。



誰にでも平等にやってくる、最期の日。
できるだけ悔いは少なくあれるように。
嗚呼、幸せだった、楽しかったと。
少しでも強く想って迎えられるように。
モラルとか、常識とか、色々。
人はさまざまなものに縛られて生きねばならないけれど。
どこまで、箍を外せるのか。追い求めることができるのか。
私も、できるだけ取りこぼさないで過ごしたいなぁ...と、強く、強く。