日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

君のこと好きなんだ


ONCE ダブリンの街角で』を観てきました。
(と、いうか、観たのはかなり前なんだけども。
 感想をそのうち手直ししようと思って放置したまま、そして直さずアップ...)



アイルランドのダブリン。
プロミュージシャンを夢見ながらもストリートでくすぶってる男。
チェコから逃れて来た難民の若い女(祖国に相方がいる子持ち)。
二人は音楽で意気投合して、男は女に、共に音楽を作ろうと誘う。
出会って、そして別れるまで。
たぶん、ほんの数日間(数週間?)程度のふれあい。


ええ、大好きですとも!
こういう作品!
古き良き少女漫画的世界...!
なので、こういう作品がアメリカで“クチコミでヒットした”という事実は少し意外。
でも、良い物語はやっぱりちゃんと人の心を打つってことなのかもしれません。
(※以下、ネタバレあり)


やっぱりオトコはいつまでも夢見る生き物で、
オンナはどんなにあどけなく頼りなく見えても
“母”として生きるリアリストだ、ということ。


例えば、年老いてもバイクを大事にしてる“男”のお父さん。
最終的には夢見る息子の背中を押して。
そして男は、心惹かれる女に出会っても夢を優先して旅立つ。
女は、子どものために別れた相手と再出発しようと決め、
好意を寄せた男の、その旅立ちを見送る。


二人は結局、お互いに惹かれ合ったまま何もなく別れたわけだけれど。
でも、“音楽”が生まれて残った。
男女の間に生まれ出づるものは、”子ども”だけじゃないのだな。
そういうカタチの交情もあるのだ、と。


一番印象に残ったのは。
男が女にチェコ語で「旦那のことを愛してる?」と問う一連のシーン。
女が母国語で答えたあの部分は、ネットで検索したところ
「もしかして、そう言ってるのかなぁ」と私が想像した通りの模様。
嗚呼、切ない...! 
なんていうか。
多分、男は女に取り繕わない“素”の答えを言って欲しかったから
母国語で訪ねたのだろうけど。
でも一方で、その答えをちゃんと聞きたいと思ってなかったんじゃなかろうか。
万一「彼を愛してる」って彼女が口にしても、
理解出来ないように逃げ道作ったんじゃなかろうか。
そして女も、伝わらないと解っていて、
だからこそ、ちゃんと本当の気持ちを言えたんじゃないだろうか、と。
嗚呼、良いなぁ...



そんなこんなで、個人的には凄く凄く心に響いた映画でした。
が、所謂“音楽映画”で、
台詞の代わりに“歌”が歌われたりするので、
その辺、観る人を選ぶかもしれません...。
でも、”音楽”が生まれる、あの言いようも無い高揚感とか
とても綺麗に表現されてたなぁと。
ああ、好きだ。