日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

その瞬間に用がある

ハート・ロッカー』(監督:キャスリン・ビグロー)鑑賞。

イラク戦争の現場、ある爆弾処理班。
あと1ヶ月ほどで任務終了となる時期に新たに隊へやってきた爆弾処理のスペシャリスト、ジェームズ軍曹。
時に大胆に、乱暴過ぎるくらいなやり方で処理業務をこなす彼に対し、何事もなく任務を終えたい他の隊員たちは戸惑いながらも、その指示に従う...果たして隊は、無事に従軍期間を全うすることができるのか?


...何かの調査で、日本人には映画を現実逃避の手段として楽しむ...みたいな人が多い的結果が出たみたいですけども、私が映画を好きな一因は、自分自身が違う世界に行けるから。違う世界を体感できるから。そういう意味では、まさに“自分の知らない世界”...。でもたぶん、これは、“だれかの現実に近いもの”であるということ。
“戦争”が“日常”となり、生と死を分けるものなんて運しかないという毎日を過ごす中で、その緊張感の中でしか“生の充実感”を得られなくなった男。
そんな人間を生み出す、“戦場”の過酷さ、非情さ...
ただただ淡々と、次々生まれてくる任務をこなす隊員達。そこには、気分を高揚させるBGMが流れたりするような映画的演出は一切ない。当たり前だ、戦場なんだ。じりじりとした沈黙。起爆装置を解除する、その瞬間へ向かう無音の。そして、“その瞬間”に取り憑かれた男の、その一歩。その後ろ姿。
演出は過剰じゃないけれど、エピソードはやはりドラマチックだ。当たり前だ、映画だもの。その、バランス。もう少し、語っても良かったのかもしれないし、もっと削っても良かったのかもしれない...。けれど。あの背中。それだけで。