日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

欠落を埋めるもの

東京奇譚集(新潮文庫)

東京奇譚集(新潮文庫)

村上春樹の最新短編集、『東京奇譚集』を読みました。
短編ということもあり、なかなか、スラスラと。
書き下ろしの『品川猿』が、ある意味一番“春樹っぽい”作品だったかなぁ。
色々な設定とか、キャラクター造詣的なところとか。

今回は、全遍にわたって
「肉親との愛情関係を上手く築いてこれなかった人たち」を巡る物語、といった印象。
“根本部分”がどこか欠落してしまった人たち?
主人公たちはそれぞれ、そんな現実を自覚しつつ、
そんな自分の中の欠落と折り合いをつけつつ、日々を生きている…。

私自身は、肉親とはそれなりに愛し愛されて生きてきていると思うので、

(とか思ったけど、このエントリと大きく矛盾することにあとから思い当たってみた/苦笑)
そういう部分での共感、みたいなものは薄くて。
いつも私は、春樹の登場人物たちに過剰に感情移入して読んでしまうのだけど、今回は結構、フラットに読めたかなぁ。
(あ、前回の『アフターダーク』もあまり感情移入はしなかったけれど)
まあ、秋の始まりには丁度良いトーンと濃さの作品だったような気がします。

物語とは乖離した部分で、「肝臓石」の中に出てきた

職業とは本来、愛の行為であるべき

というフレーズは、ちょっと耳が痛かった(笑)。
そりゃあ、そうあれればとても幸せなのだろうけど…。
現実と理想。
なかなか難しい。


今は、リチャード・フラナガンの『グールド魚類画帖』を攻略中。

グールド魚類画帖

グールド魚類画帖

いやもう、まさに“攻略”って感じで、物語に挑んでます…。
面白いのだけど、普段の私の“読み方”ではツラくて、気を抜くと、ちょっとどうにも混乱してきてしまって。
でも色々、感覚や想像を刺激されるので、結構満喫しています。
読み終わった時、感想とか書けるかなぁ…。