日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

それは寓話ではなく現実


エミール・クストリッツァ監督の代表作『アンダーグラウンド』。
もう、ずっとずっと観ようと思っていたのだけれど、
当然ながらレンタル店じゃよほどの大きいお店じゃないと置いてないし、
おまけに約3時間という長尺。
ということで、ずっと機会を持てずに来たのですが、結局購入。
やっと! 観れました。


いやもう。
苛烈。強烈。鮮烈。


ひとりの武器商人、マルコを主点に、
ユーゴスラビアという国が辿った激動の数十年を描いた作品。
状況説明も舞台設定も、登場人物説明じみたものも、当然ながらひとつもなく。
ただ、唐突に物語は始まり、そこはまさに戦火の元。
そこに息づいているのはどうしようもなく力の無い“人間たち”で、
彼らは、“国”という土台のうえで、
ただただ自分たちなりの幸せや生活を手に入れようとしていて。
そんな彼らに容赦なく、時は流れる。
時計を操作しても、何をどうしても、逃れられない“時流”というもの...。


暗喩とかシニカルさとか、ブラック・ユーモアとか。
役者! 画! 音! ...とか。
なんかもう、あらゆるものが機能的に“そうあるべき”カタチで仕事をしてる。
3時間は、私の上にも流れる。
寓話的なラストシーン。
最後、「ひとつの国があった」という、そのひと言を飲み込んで。
自分なりに“自分が目にした3時間”と、“彼らとその祖国の数十年”をもう一度咀嚼した、その瞬間。
いきなり、涙が溢れた。


なんかもう、凄い映画。
観れて良かったなぁ。


アンダーグラウンド [DVD]

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