日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

北関東のおもいで


こないだどっかの報道番組で一連の誘拐殺人事件の特集をやっていたり(記憶が確かなら、それは“栃木県警の捜査のずさんさ”を検証するような内容だったような気がするけれど)、ブクマの注目記事で関連エントリを拝読したりして、なんとなく、自分の故郷のことを思い返してみたりしたのだった。
私が生まれ18まで育ったのはまさに、件の事件があった地域...栃木県足利市、群馬県太田市の近隣で。でも、周囲でそんなに陰惨な事件が起きていたとは、全く知らなかったなぁ。ゆかりちゃん事件は、私がすでに上京してからの事件だったけれど、でも現場となったパチンコ店は見知った店だったので驚愕した記憶はある。あと、大胡町の女子高生殺害事件とかもあったね...あれも複雑な想いを抱いたなぁ。
"北関東”と言うけれど、あの辺はたいして山間ではない。渡良瀬川と利根川が流れて、どちらかといえば平地で、市街地なんてほんとうに小さくて郊外は田んぼや畑で。なんとなく見渡しはいいのに、でも、空虚だった。
とにかく、私はもうあの街へ戻って暮らすことはないだろうなぁ...としみじみ思う*1。あのあたりは、本当に“なんにもない”。私が物心ついて認識した父親の”趣味”は、“パチンコと競艇”だった。オトナの男たちの多くが、パチンコでヒマを潰す。だって、それしか娯楽的なものが見当たらないんだもん。ウチの父親は子守りも大してしない人だったから尚更、記憶に残ってるのだけど、私の一番古い記憶は、桐生競艇で“ハズレ舟券”を妹と拾って遊んた光景だ。“パチンコ屋で放流”も、された記憶が有る...そして、そんな子どもたちは結構、存在した。大きなメーカーの大きな工場がどーん!とあって、ご近所やクラスメイトの親のほとんどが同じ職場勤めだった。オトナたちの間では、もしかしたらそれなりのしがらみや“何か”もあったのかもしれないなぁ。平坦な眺め。空っぽの街を車の窓から眺めて動く生活。
当然ながら、“知らない人の車には乗ってはいけません”というお達しは、小さな頃から本当に何度も何度も、色んな場面で諭された記憶はある。実際、“道が解らないから、車に乗って説明して”という手口の変質者は結構、居たみたい。私も実際、そうやって声をかけられたことは何度かあったし*2。今でもトラウマ的に忘れられないのは、小学校低学年頃に、デパートの本屋の中で痴漢に追いかけ回されたこと...見事に首から上は覚えてないけど、シャツの感じとか胸に触れてきた手の“残像”はずっと拭えてない。遭遇した何人かの変質者のオトコの人たちを思い返すと*3、比較的若く(20代半ば〜30代前半くらいかなぁ)、とにかく“普通”だった。それこそ、『殺人の追憶』ではないけれど。大きな工場の若手が多く入っているという男子寮。その裏の道とか、何度か声かけられたなぁ。よりによって土曜の真っ昼間でも人通りが少なくて、でも近道だから急いでる時は使ってた。で、時々遭遇した。通報なんてできなかった。とにかく“この場を離れろ!”としか考えず、離れられた後でも、親にも言わなかった。なんとなく。実際、“その工場の人”なのか証拠はないわけだし。でもなんとなく“そーいう人”が出ても仕方ない...と思えてしまえる空気があった。そういえば、今(最近?)、太田市の南口は北関東随一の風俗街らしいけれど、そういう店がちゃんと立ち並ぶ方が、かえって健全な気がするよ...当時の”なんにもなさ”を思えば。
数年前、郊外型のショッピングモールが出来てやっとシネコンが出来たけど、まともな映画館もなかった。一応、“アタマでっかちサブカル傾倒気味女子高生”だった私は、なんかもう、本当にそんな街が退屈で退屈で、どーしよーもなかった。“カルチャー”も何にも無い小さな街で、今思えば“頑張ってる品揃え”をしてくれてたいくつかのお店(書店や、レンタルレコード/ビデオ店や、古書店)にしがみついてた。とにかく東京に出たかった。“東京なんて怖いとこだ”と、当時同居していた祖母に言われたけれど、今思えば、あの街も充分怖かったのかも。まあ、でも結局、怖いヒトはどこにでも居るし、遭遇してしまうかどうかは、やはり運というか巡り合わせなんだろう。私が、パチンコ店で目を離されてたけど無事だったように。


結局、単なる思い出語りに終始してしまったのだった...今も、犯人はあのあたりで“普通に”暮らしてるのかなぁ。流れ上、ネガな記憶や出来事ばかりを思い出したし、連ねてしまったけれど、なんだかんだで“なんにもない田舎だ”ってことで、ある種の愛おしさも抱いてはいるのだ。あの街に。

*1:もちろん、今もそこに住む両親の身に何かが起きて、住まざるを得なくなる可能性はある訳だけれど

*2:ちなみに、対象は幼女だけじゃない。中学~高校時代も良く声をかけられた。歩いてたり自転車乗ってる横に車で近づいてきて、親切心を出して応じれば、露出&自慰を見せつけられる...というものもあったなぁ

*3:これがまた、全然忘れないのだね...