日々の泡立ち

泡立っては消えていく言葉の置き場。

泣くこと厳禁!

飛ぶ教室 [DVD]

観てきました、トミー・ウ゛ィガント監督『飛ぶ教室』!!
先日、「どうしよっかなー」といった日記を書きましたけど、
どうしてどうして、すっごく素敵な映画でした!
ケストナーの原作は、私にとって本当に本当に、この上なく大切な本なのですが、
それだけ思い入れを持ってる私としても、素直に楽しめました。
まあ、事前に多少、情報を仕入れていたので、
多少は「心構え」ができていたせいかもしれないですけど。
……以下、原作&映画本編からの引用多用するので、ネタばれになります。
もし「これから観よう」と思ってる方はご注意を。


とにかく純粋に、“子ども映画”としてすごく良く出来てると思います。
ワクワクするし、元気が出るし、ちゃんとしっかりメッセージもある。
その内容の濃さは、まさに、ケストナーの原作と同じ。
やっぱり、観ながら「あ、あの設定はこうなったのか」とか
「あのエピソードはこういう風に現代アレンジされてるのか」とか
原作を知ってるからどうしても気にしてしまいましたが、
すべて納得できるというか、
「現代にアレンジする上で、納得の手の入れ方」だったと。
加えて「そうなのよ、ここよ、これなのよ!」というシーンやエピソードが
ちゃんと映画化されていて、
その「原作と同じ部分」と「原作と違う部分」のバランスが絶妙だったと思います。
例えば、正義先生と禁煙先生(映画じゃ先生じゃないけど)の別離の理由とか。
ネット上では多少批判も出てる劇中劇“飛ぶ教室”のラップ&ミュージカルも、
実際、その“ラップされてる内容”がかなり説教臭いというか(苦笑)“クサい”ので、
子供たちがみんなで元気に軽〜く“ラップ”することで、
そんなに重苦しく過剰に説教臭く感じなかったし、
子どもたちが
“自分自身でメッセージを受け手(=観ている同年代の子どもたち)へ発信している”ことにもなっていて。
(多分、あれをみんなで合唱とか、実際の劇中劇でされたら、かなりヒくと思う……)
“現代の子供たち”に一番響くテーマを、ちゃんとケストナーの意を汲み取った上で、
“現代に則して”ちゃんと真摯に描かれていて。
(だから、“女の子”をちゃんと出したことも、ありだったと思います。
 当時に比べ“男女間”の距離も、現代はだいぶ変わってきてるんだよ、という象徴のような。
 現代なら女の子がいない方が不自然だし)
あとはとにかく、各登場人物のキャラ付けがすごくしっかりしていて!
もう、子供たちはみんな可愛いし、イメージに合ってるし、
ほんとその点については文句なし!!
あ、正義&禁煙コンビは、あまりに“ゲルマン男”で
最初はちょっと違和感感じましたけど(苦笑)。
(正直もっと細面をイメージしてたので……トリヤーの挿絵の影響だね)
バスティアンがクロイツカムになってるのも、逆に面白かったし、
あと、“美少年テオドル”が単なる“美少年”じゃなくて、
“今ドキのオシャレに気を使う、普通の気取った(?)男の子”っていう描かれ方も良かったな。
どうでもいいけど、マッツが一騎討ちしてギブ取ったところ、
トリヤーの表紙絵と一緒!!!(こういう芸の細かさが憎いのだ〜)
それにしても、正義先生の例の「昔の話」のシーンでは、ひとりウルウルしてました。
(他に誰も泣いちゃなかったよ……入り込み過ぎ)
いやもう本当に、初めてケストナーの原作を読んだ頃に戻ったみたいに、
素直に物語に入り込み、楽しんでしまいました。
さてさて。
その上で。
あえてやっぱり書きたいことといえば。
マルティン少年の設定&エピソードでしょう……
もう『現代に置き換える』という時点で真っ先に変更されてしまったであろう、
原作における彼の、とにかく切ない設定。
原作では一番の柱であった部分だからこそ、
ここが変更=主役はヨナタン、となった。
まあ、これはしゃあない。
ヨーニーを転校生にすれば、自然に登場人物紹介もできるしね。
でもでもでもー。
そこをカットしちゃったから、いまいちマルティン&ヨーニーの友情がぼんやりしちゃったなぁ。
原作にはっきりと見て取れる“友情関係”としては、
正義&禁煙先生、マルティン&ヨーニー、マチアス&ウリーという3組がメインにあったわけで、
結局、映画ではそのうち2組は原作に近く表現されてたのだけど。
ああ、残念。
とりあえず、マルティン役の少年がとてもとても可愛く(笑)気に入っただけに、
彼の「泣くこと厳禁!」シーンが観たかったなぁ〜。
っていうか、要は、この映画における“マルティン”自体が、原作に比べると全然弱いので、
そこがとても残念だったということだね。
思いがけずゼバスティアンとか目立ってるだけに(いや、ゼバスティアンも好きだが)。


とりあえず、この映画を機に『飛ぶ教室』を知った方達には、
ぜひぜひ原作を読んでいただき、
マルティンの切なさ&けなげさを存分に味わって涙して頂きたい。
そして改めて、原作の説教臭さも味わって頂きたいものです(笑)。
(重ね重ね書きますが、私はケストナーのその説教臭さも包括して、
 尊敬してるし、大好きだし、大切だと思っているのですが)
まあ、つらつらと好き勝手に書きましたが、
本当に気に入った1本になりました。
DVD出たら絶対買います。これは。
私にとって
『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』
『さよなら子どもたち』
と並んで、「大好き“子ども映画”」と認定させて頂きます(笑)。